2020/09/16
令和2年度税制改正大綱 消費課税その1
居住用賃貸建物の取得に係る消費税の仕入税額控除制度の適正化
・改正の趣旨
居住用賃貸建物の取得に係る仕入税額は、住宅の賃料(非課税売上)に対応するため、仕入税額控除の対象となるべきものではありませんが、作為的な金地金の売買を継続的に行い課税売上割合を高めることにより仕入税額控除を行う事例があることから、居住用賃貸建物の取得に係る仕入税額控除を、建物の用途の実態に応じて適正に計算するように改正されました。
・内容
1.居住用賃貸建物の取得に係る仕入税額の制限
事業者が、国内において行う居住用賃貸建物(住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物※1 以外の建物であって高額特定資産※2又は調整対象自己建設高額資産※3に該当するもの)に係る課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除の対象としないこととされました。
ただし、例えば、建物の一部が店舗用になっている居住用賃貸建物を、その構造及び設備その他の状況により住宅の貸付けの用 に供しないことが明らかな部分とそれ以外の部分(「居住用賃貸部分」といいます。)とに合理的に区分しているときは、その居住用賃貸部分以外の部分に係る課税仕入れ等の税額については、これまでと同様、仕入税額控除の対象となります。
※1 住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物とは、建物の構造や設備等の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが客観的に明らかなものをいい、例えば、その全てが店舗である建物など建物の設備等の状況により 住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物が該当します。
※2 高額特定資産とは、一の取引単位につき、課税仕入れ等に係る支払対価の額(税抜き)が 1,000 万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいいます。
※3 調整対象自己建設高額資産とは、他の者との契約に基づき、又は事業者の棚卸資産として自ら建設等をした棚卸資産で、その建設等に要した課税仕入れに係る支払対価の額の 100/110 に相当する金額等の累計額が 1,000 万円以上となったものをいいます。
2.居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の調整
上記1の仕入税額控除制度の適用が認められなかった居住用賃貸建物について、その仕入れの日から同日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間の末日までの間に住宅の貸付け以外の貸付けの用に供した場合又は譲渡した場合には、 それまでの居住用賃貸建物の貸付け及び譲渡の対価の額を基礎として計算した額を当該課税期間又は譲渡した日の属する課税期 間の仕入控除税額に加算して調整します。
(1) 転用
第三年度の課税期間※1の末日にその居住用賃貸建物を有しており、かつ、その居住用賃貸建物 の全部又は一部を調整期間※2に課税賃貸用に供した場合
以下の算式で計算した消費税額を第三年度の課税期間の仕入控除税額に加算
【加算する消費税額=A×C/B】
A:居住用賃貸建物の課税仕入れ等に係る消費税額
B:調整期間に行った居住用賃貸建物の貸付の対価の額※3の合計額
C:Bのうち、課税賃貸用に供したものに係る金額
※1 第三年度の課税期間とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間をいいます。
※2 調整期間とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日から第三年度の課税期間の末日までの間をいいます。
※3 対価の額は税抜き金額で、この対価の額について値引き等(対価の返還等)がある場合には、その金額を控除した残額で計算します。
(例)令和3年4月1日に2億円で居住用賃貸建物を取得し、同日以後「居住用」として貸し付けていたが、令和5年6月1日から「課税賃貸用」に供した場合
(単位:万円)
・居住用賃貸建物の取得消費税額 2,000
・R3.4.1〜R5.5.31までの居住用建物の賃料合計 600
・R5.6.1からR6.3.31(第三年度課税期間末日)400
A=2,000 B=600+400=1,000 C=400
加算する消費税額=A×C/B=2,000×400/(600+400)=800
800をR6.3月期の仕入控除税額に加算調整します。
(2) 譲渡
その居住用賃貸建物の全部または一部を調整期間に他の者に譲渡した場合
以下の算式で計算した消費税額を譲渡した日の属する課税期間の仕入控除税額に加算
【加算する消費税額=A×(b+C)/(B+C)】
A:居住用賃貸建物の課税仕入れ等に係る消費税額
B:課税譲渡等調整期間※4に行った居住用賃貸建物の貸付の対価の額※5の合計額
b:上記Bのうち課税賃貸用に供したものに係る金額
C:居住用賃貸建物の譲渡の対価の額※5
※4 課税譲渡等調整期間とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日からその居住用賃貸建物を他の者に譲渡した日までの間をいいます
※5 対価の額は税抜き金額で、この対価の額について値引き等(対価の返還等)がある場合には、その金額を控除した 残額で計算します。
(例)R3.4.1に1億円で居住用賃貸建物を取得し、同日以後「居住用」として貸し付けていたが、R5.4.1にこの建物を7,200万円で譲渡した場合
・居住用賃貸建物の取得消費税額 1,000
・R3.4.1〜R5.4.1(課税譲渡等調整期間)に居住用賃貸料 800
・R5.4.1の居住用建物の譲渡対価 7,200
・R5.4.1〜R6.3.31(譲渡した日の属する課税期間)
A=1,000 B=800 b=0(居住用のみに供しており課税賃貸用に供していない)
C=7,200
加算する消費税額=A×(b+C)/(B+C)=1,000×(0+7,200)/(800+7,200)
=900
900をR6.3月期の仕入控除税額に加算調整します。
・適用開始時期
令和2年10月1日以後に行われる居住用賃貸建物の課税仕入れ等の税額について適用されます。
また経過措置として、令和2年3月 31 日までに締結した契約に基づき令和2年 10 月1日以後に行われる居住用賃 貸建物の課税仕入れ等については、上記の制限は適用されません。
・改正の趣旨
居住用賃貸建物の取得に係る仕入税額は、住宅の賃料(非課税売上)に対応するため、仕入税額控除の対象となるべきものではありませんが、作為的な金地金の売買を継続的に行い課税売上割合を高めることにより仕入税額控除を行う事例があることから、居住用賃貸建物の取得に係る仕入税額控除を、建物の用途の実態に応じて適正に計算するように改正されました。
・内容
1.居住用賃貸建物の取得に係る仕入税額の制限
事業者が、国内において行う居住用賃貸建物(住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物※1 以外の建物であって高額特定資産※2又は調整対象自己建設高額資産※3に該当するもの)に係る課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除の対象としないこととされました。
ただし、例えば、建物の一部が店舗用になっている居住用賃貸建物を、その構造及び設備その他の状況により住宅の貸付けの用 に供しないことが明らかな部分とそれ以外の部分(「居住用賃貸部分」といいます。)とに合理的に区分しているときは、その居住用賃貸部分以外の部分に係る課税仕入れ等の税額については、これまでと同様、仕入税額控除の対象となります。
※1 住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物とは、建物の構造や設備等の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが客観的に明らかなものをいい、例えば、その全てが店舗である建物など建物の設備等の状況により 住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物が該当します。
※2 高額特定資産とは、一の取引単位につき、課税仕入れ等に係る支払対価の額(税抜き)が 1,000 万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいいます。
※3 調整対象自己建設高額資産とは、他の者との契約に基づき、又は事業者の棚卸資産として自ら建設等をした棚卸資産で、その建設等に要した課税仕入れに係る支払対価の額の 100/110 に相当する金額等の累計額が 1,000 万円以上となったものをいいます。
2.居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の調整
上記1の仕入税額控除制度の適用が認められなかった居住用賃貸建物について、その仕入れの日から同日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間の末日までの間に住宅の貸付け以外の貸付けの用に供した場合又は譲渡した場合には、 それまでの居住用賃貸建物の貸付け及び譲渡の対価の額を基礎として計算した額を当該課税期間又は譲渡した日の属する課税期 間の仕入控除税額に加算して調整します。
(1) 転用
第三年度の課税期間※1の末日にその居住用賃貸建物を有しており、かつ、その居住用賃貸建物 の全部又は一部を調整期間※2に課税賃貸用に供した場合
以下の算式で計算した消費税額を第三年度の課税期間の仕入控除税額に加算
【加算する消費税額=A×C/B】
A:居住用賃貸建物の課税仕入れ等に係る消費税額
B:調整期間に行った居住用賃貸建物の貸付の対価の額※3の合計額
C:Bのうち、課税賃貸用に供したものに係る金額
※1 第三年度の課税期間とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間をいいます。
※2 調整期間とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日から第三年度の課税期間の末日までの間をいいます。
※3 対価の額は税抜き金額で、この対価の額について値引き等(対価の返還等)がある場合には、その金額を控除した残額で計算します。
(例)令和3年4月1日に2億円で居住用賃貸建物を取得し、同日以後「居住用」として貸し付けていたが、令和5年6月1日から「課税賃貸用」に供した場合
(単位:万円)
・居住用賃貸建物の取得消費税額 2,000
・R3.4.1〜R5.5.31までの居住用建物の賃料合計 600
・R5.6.1からR6.3.31(第三年度課税期間末日)400
A=2,000 B=600+400=1,000 C=400
加算する消費税額=A×C/B=2,000×400/(600+400)=800
800をR6.3月期の仕入控除税額に加算調整します。
(2) 譲渡
その居住用賃貸建物の全部または一部を調整期間に他の者に譲渡した場合
以下の算式で計算した消費税額を譲渡した日の属する課税期間の仕入控除税額に加算
【加算する消費税額=A×(b+C)/(B+C)】
A:居住用賃貸建物の課税仕入れ等に係る消費税額
B:課税譲渡等調整期間※4に行った居住用賃貸建物の貸付の対価の額※5の合計額
b:上記Bのうち課税賃貸用に供したものに係る金額
C:居住用賃貸建物の譲渡の対価の額※5
※4 課税譲渡等調整期間とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日からその居住用賃貸建物を他の者に譲渡した日までの間をいいます
※5 対価の額は税抜き金額で、この対価の額について値引き等(対価の返還等)がある場合には、その金額を控除した 残額で計算します。
(例)R3.4.1に1億円で居住用賃貸建物を取得し、同日以後「居住用」として貸し付けていたが、R5.4.1にこの建物を7,200万円で譲渡した場合
・居住用賃貸建物の取得消費税額 1,000
・R3.4.1〜R5.4.1(課税譲渡等調整期間)に居住用賃貸料 800
・R5.4.1の居住用建物の譲渡対価 7,200
・R5.4.1〜R6.3.31(譲渡した日の属する課税期間)
A=1,000 B=800 b=0(居住用のみに供しており課税賃貸用に供していない)
C=7,200
加算する消費税額=A×(b+C)/(B+C)=1,000×(0+7,200)/(800+7,200)
=900
900をR6.3月期の仕入控除税額に加算調整します。
・適用開始時期
令和2年10月1日以後に行われる居住用賃貸建物の課税仕入れ等の税額について適用されます。
また経過措置として、令和2年3月 31 日までに締結した契約に基づき令和2年 10 月1日以後に行われる居住用賃 貸建物の課税仕入れ等については、上記の制限は適用されません。