2015/10/30
「国外財産調書」の提出制度
「国外財産調書」の提出制度
・国外財産調書制度のあらまし
国外財産に係る所得や相続財産の申告漏れについては近年増加傾向にあり、国外財産に関する適正な課税・徴収の確保を図る観点から、その年の12月31日において、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を保有するものは、その保有する国外財産について必要な事項を記載した調書(国外財産調書)を、翌3月15日までに所轄の税務署長に提出しなければなりません。
1.国外財産調書の提出義務者
国外財産調書の提出が必要となるのは、日本の居住者(「非永住者」を除く)で、その年の12月31日において、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する者です。
※「非永住者」とは、日本の国籍を有しておらず、かつ過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間が5年以下である者をいいます。
また、国外財産調書の提出は、所得税確定申告書の提出の有無とは関係なく義務付けられるものです。
例えば申告所得のない者でも、贈与や相続により5,000万円超の国外財産を有する場合には、国外財産調書を提出しなければならないので注意が必要です。
従って、所得税の申告義務者でない場合は、その者の住所地(国内に住所がないときは居所地)を所轄する税務署長に提出することになります。
なお、12月31日においては居住者であったが、提出期限の翌年3月15日までに死亡した場合、又は出国(海外旅行等ではなく、住所を有しなくなること)した場合は、国外財産調書の提出は不要になります。
2.国外財産の意義
「国外財産」とは「国外にある財産」の全てをいいます。財産に債務は含まれません。また国外にある債務については資産の合計額から引くこと(相殺)ができませんので注意が必要です。
国外にあるか否かの判定は基本的には財産の所在について定める相続税法の規定により判断されます。
例えば主な財産の所在地については、以下の通りです。
財産の種類 所在の判定
動産・不動産 動産・不動産の所在地
預貯金 預貯金の受入をした営業所又は事業所の所在地
有価証券等 有価証券を管理する口座が開設された金融商品取引所等の所在地
生命保険契約等の 契約に係る保険会社等の本店又は事務所の所在地
保険金
3.国外財産の価額
国外財産の「価額」は、その年の12月31日における「時価」又は時価に準ずるものとして「見積価額」によることとされています。
(1)「時価」とはその年の12月31日における国外財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいいます。
(2)「見積価額」とは、その年の12月31日における国外財産の現況に応じ、その財産の取得価額や売買実例価額などを基に、合理的な方法により算定した価額をいいます。
国外財産の価額についての「邦貨換算」については、その年の12月31日における「外国為替の売買相場」により行うものとされています。
具体的には、国外財産調書を提出する方の取引金融機関が公表するその年の12 月31 日における最終の対顧客直物電信買相場(TTB)又はこれに準ずる相場(同日に当該相場がない場合には、同日前の当該相場のうち、同日に最も近い日の当該相場)により邦貨に換算し、国外財産調書に記載することとされています。
4.国外財産調書への記載事項
国外財産調書には、提出者の氏名・住所(又は居所)に加え、国外財産の種類、用途(一般用及び事業用の別)、所在、数量、価額及びその他必要な事項を記載することになります。
※「事業用」とは、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業又は業務の用に供することをいい、「一般用」とは、それ以外の用に供することをいいます。
5.所得税法上の「財産債務調書」との関係
国外財産調書を提出する者が、所得税法に規定する「財産債務調書」を提出する場合、その「財産債務調書」には、国外財産に関する事項の記載は要しないこととされています。
ただし「財産債務調書」の提出基準の判定を行う観点から、「財産債務調書」に、「国外財産調書に記載した国外財産の価額の合計額」及び「国外財産調書に記載した国外転出特例対象財産の価額の合計額」を記載する必要があります。
なお国外にある債務については「財産債務調書」に記載する必要があります。
6.過少申告加算税等の特例
(1)過少申告加算税等の軽減措置
国外財産調書を提出期限内に提出した場合には、国外財産調書に記載がある国外財産に関する所得税等又は相続税の申告漏れが生じたとであっても、その国外財産に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について、5%減額されます。
(2)過少申告加算税等の加重措置
国外財産調書の提出が提出期限内にない場合又は提出期限内に提出された国外財産調書に記載すべき国外財産の記載がない場合(重要な事項の記載が不十分と認められる場合を含みます)に、その国外財産に関する所得税等の申告漏れ(死亡した方に係るものを除きます)が生じたときは、その国外財産に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について、5%加重されます。
(注)「過少申告加算税等の加重措置」は、相続税及び亡くなられた方の所得税等につての適用はありません。
7.虚偽記載や不提出についての罰則
国外財産調書の提出制度においては、次の行為をした場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処することとされています。
(1)偽りの記載をして国外財産調書を提出した場合
(2)正当な理由がなく提出期限内に国外財産調書を提出しなかった場合
(3)国外財産調書の提出に関する調査について行われる当該職員の質問に対して答弁せず、
若しくは偽りの答弁をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
(4)国外財産調書の提出に関する調査について行う物件の提示又は提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含みます。)を提示し、若しくは提出したとき。
なお、上記(2)については、情状により、刑を免除することができることとされています。
・国外財産調書制度のあらまし
国外財産に係る所得や相続財産の申告漏れについては近年増加傾向にあり、国外財産に関する適正な課税・徴収の確保を図る観点から、その年の12月31日において、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を保有するものは、その保有する国外財産について必要な事項を記載した調書(国外財産調書)を、翌3月15日までに所轄の税務署長に提出しなければなりません。
1.国外財産調書の提出義務者
国外財産調書の提出が必要となるのは、日本の居住者(「非永住者」を除く)で、その年の12月31日において、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する者です。
※「非永住者」とは、日本の国籍を有しておらず、かつ過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間が5年以下である者をいいます。
また、国外財産調書の提出は、所得税確定申告書の提出の有無とは関係なく義務付けられるものです。
例えば申告所得のない者でも、贈与や相続により5,000万円超の国外財産を有する場合には、国外財産調書を提出しなければならないので注意が必要です。
従って、所得税の申告義務者でない場合は、その者の住所地(国内に住所がないときは居所地)を所轄する税務署長に提出することになります。
なお、12月31日においては居住者であったが、提出期限の翌年3月15日までに死亡した場合、又は出国(海外旅行等ではなく、住所を有しなくなること)した場合は、国外財産調書の提出は不要になります。
2.国外財産の意義
「国外財産」とは「国外にある財産」の全てをいいます。財産に債務は含まれません。また国外にある債務については資産の合計額から引くこと(相殺)ができませんので注意が必要です。
国外にあるか否かの判定は基本的には財産の所在について定める相続税法の規定により判断されます。
例えば主な財産の所在地については、以下の通りです。
財産の種類 所在の判定
動産・不動産 動産・不動産の所在地
預貯金 預貯金の受入をした営業所又は事業所の所在地
有価証券等 有価証券を管理する口座が開設された金融商品取引所等の所在地
生命保険契約等の 契約に係る保険会社等の本店又は事務所の所在地
保険金
3.国外財産の価額
国外財産の「価額」は、その年の12月31日における「時価」又は時価に準ずるものとして「見積価額」によることとされています。
(1)「時価」とはその年の12月31日における国外財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいいます。
(2)「見積価額」とは、その年の12月31日における国外財産の現況に応じ、その財産の取得価額や売買実例価額などを基に、合理的な方法により算定した価額をいいます。
国外財産の価額についての「邦貨換算」については、その年の12月31日における「外国為替の売買相場」により行うものとされています。
具体的には、国外財産調書を提出する方の取引金融機関が公表するその年の12 月31 日における最終の対顧客直物電信買相場(TTB)又はこれに準ずる相場(同日に当該相場がない場合には、同日前の当該相場のうち、同日に最も近い日の当該相場)により邦貨に換算し、国外財産調書に記載することとされています。
4.国外財産調書への記載事項
国外財産調書には、提出者の氏名・住所(又は居所)に加え、国外財産の種類、用途(一般用及び事業用の別)、所在、数量、価額及びその他必要な事項を記載することになります。
※「事業用」とは、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業又は業務の用に供することをいい、「一般用」とは、それ以外の用に供することをいいます。
5.所得税法上の「財産債務調書」との関係
国外財産調書を提出する者が、所得税法に規定する「財産債務調書」を提出する場合、その「財産債務調書」には、国外財産に関する事項の記載は要しないこととされています。
ただし「財産債務調書」の提出基準の判定を行う観点から、「財産債務調書」に、「国外財産調書に記載した国外財産の価額の合計額」及び「国外財産調書に記載した国外転出特例対象財産の価額の合計額」を記載する必要があります。
なお国外にある債務については「財産債務調書」に記載する必要があります。
6.過少申告加算税等の特例
(1)過少申告加算税等の軽減措置
国外財産調書を提出期限内に提出した場合には、国外財産調書に記載がある国外財産に関する所得税等又は相続税の申告漏れが生じたとであっても、その国外財産に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について、5%減額されます。
(2)過少申告加算税等の加重措置
国外財産調書の提出が提出期限内にない場合又は提出期限内に提出された国外財産調書に記載すべき国外財産の記載がない場合(重要な事項の記載が不十分と認められる場合を含みます)に、その国外財産に関する所得税等の申告漏れ(死亡した方に係るものを除きます)が生じたときは、その国外財産に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について、5%加重されます。
(注)「過少申告加算税等の加重措置」は、相続税及び亡くなられた方の所得税等につての適用はありません。
7.虚偽記載や不提出についての罰則
国外財産調書の提出制度においては、次の行為をした場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処することとされています。
(1)偽りの記載をして国外財産調書を提出した場合
(2)正当な理由がなく提出期限内に国外財産調書を提出しなかった場合
(3)国外財産調書の提出に関する調査について行われる当該職員の質問に対して答弁せず、
若しくは偽りの答弁をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
(4)国外財産調書の提出に関する調査について行う物件の提示又は提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含みます。)を提示し、若しくは提出したとき。
なお、上記(2)については、情状により、刑を免除することができることとされています。